師走 No,17 2003年12月号
2003.12.21
師走 No,17 2003年12月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

師走 No,17 2003年12月号


 12月の知床は 1年を通して 最も観光シーズンのOFFといえる。

 今年は冷夏だった影響か 秋はとても暖かくて 例年より1ヶ月も長く楽しめた。

 農業も豊作だったし 鮭漁はここ数年で一番の大漁だったそうだ。漁師さん達は切り上げて 旅行が海外や沖縄と豪華だ。こうゆう年は ウトロ全体が なんとなく明るい。

 私達 観光の仕事をしている仲間も それぞれの店を一旦閉めて本格的な冬を迎える前に 家のまわりや 最終の庭木の手入れなどを済ませる。

「初雪は いつ頃降るんですか」と よく聞かれるが その年によって1ヶ月ぐらいの幅がある。昨年は 11月20日頃だったが 一昨年は11月上旬だったと思う。

 今年はといえば なんと今日(12月7日)だ。雪が降り積もるまでは どんなに寒くても まだ 秋の気配が残っているのに白一色になると それまでの風景が一変し 一気に冬になる。季節の変化が とてもわかりやすい。

 12月というと 一家の主婦にとっては「忙しい」という イメージがあるが 自分も含めて まわりの友達も あまりそんな風には見えない。むしろ 夏の間じゅう 休みなく働いている人が多いので 雪が降り積もるとのんびりと 体を休めているような感じだ。

 私も この時期は 友人と持ち寄りのランチパーティーをしたり しばらく会えなかった友達を招いて 新メニューを披露したりしている。

 知床の女性達は とてもよく働く。ウトロには ホテルだけでも 7つもあるので 早朝から深夜に渡り
さまざまな分野での仕事がある。

師走 No,17 2003年12月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 子供が小さい人は 日中保育所や学校に行っている間に。子供が大きくなれば空いた時間にと ライフスタイルに合わせて仕事を選んでいる。

 その他 自営業や独立して船を持っている漁師さん達の 奥さんも「賄い」などで大忙しだ。

忙しいついでに 秋のうちに たいていの家は 大掃除も済ませてしまうので12月は 気分的にも ちょっと余裕なのかもしれない。

 街では大イベントのクリスマスも ここでは実にそっけない。クリスマスソングも 流れているわけでもないから テレビやラジオで「クリスマス特集!」などがあると じっと聞き入ってしまう。

だからからなのか 我が家のクリスマスの飾り付けは 年々ハデになっている。

 さすがに 生のモミの木はないが 1メートル程に成長した「クレスト」の木に赤や緑のリボンをつけて ガラスのオーナメントを飾る。

玄関や家の あっちこっちには リースやミニツリーを置いて気分を高めるようにしている。

 当日は チラホラと降る雪はムードを盛り上げるのに満点だがもし吹雪にでもなったら さすがにサンタさんもソリを使えない。

子供達は 24日の天候が一番心配だ・・・



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:メルヘンの丘女満別町12月
2枚目:斜里岳斜里町12月

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2003.11.21
早朝の港 No,16 2003年11月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

早朝の港 No,61 2003年11月号


 1週間程前に 山の会の仲間の女性が東京から フラリとやって来た。

 シーズンOFFのうえに 小雨が降っていて 彼女は行動に迷っていた。

すると 地元の友達が「明日の朝 うちの船に乗らない」と 声をかけてくれた。彼女は「乗物の中で船が一番酔うの」と いうのにもかかわらず「乗る!乗る!」と大はしゃぎだ。

 私も以前 小さな漁船に乗せてもらったことがある。

船長は いつもは おだやかな笑顔の人なのに 船に乗ったとたんにまるで人が変わったように「ホレ!そこ何してんだ。バカ!網をちゃんとひけ。ホレ」と 恐怖の大変身をして船酔いなど してる暇がなかった。でも船を降りたら またいつもの笑顔で「これ持っていきなさい」と今上がったばかりのカレイをくれたので その変貌ぶりに2度びっくりしてしまった。

 そんな経験があるので はしゃぐ彼女に「船は漁師さん達の仕事場だから絶対ジャマしないでね」と言っておいた。

 さて当日 カッパに長靴、軍手を着けて港へ向かった。が・・・ 待ち合わせの時間 5分前になっても誰もいない。「確か 共栄丸っていったよね」と 2人で船の前で待っていた。ただ船のエンジンはかかっていたので 出港はするらしい。

そこへ漁師さん達全員が現れた。

 普通は出港前の漁船といったら 漁の準備や 何かで忙しく動きまわっている漁師さん達を想像していたので「どうしたの揃って」と聞くと 「どうしたって。メシだよ。メシを食ってたの」

「ああ そうなんだ」

 そうよねえ。朝ごはんね。そういえば漁師さん達は 集まって仕事前に自分の番屋で一緒に朝食を取るのだそうだ。これから 仕事という時に コーヒーとトーストでは 元気出ないもね。

 それぞれの番屋には 専用の”おばさん”がいて 朝からしっかりと作ってくれるらしい。それに「1つ釜の飯」を食べると 仕事上の結束も強くなると いわれている。

「じゃ よろしくお願いそます」

彼女を置いて 一眠りしてからまた港に 迎えに行った。「酔い止めの薬を飲んだけど ベタナギでまったく大丈夫だった」と笑顔で下船して来た。

早朝の港 No,16 2003年11月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 港には 上がったばかりの鮭が 山積みで小雨の中でも キラキラしている。

 思えば こんなに早朝に港に来たのは ウトロに住みだしてはじめてだ。

 世界遺産の最終候補地に選ばれる程 自然に恵まれているのに1歩 自分から足を踏み出さなければ それを楽しむことはできないんだなあと思う。

 私達も 知床に住みはじめた頃は 子供達を連れて「カムイワッカ湯の滝」を登ったり 「知床五湖」を歩いたりと生活そのものが旅行気分だった。

 けれど 下の子が生まれた頃からは 必要以上は何もしなくなってしまった。これは「仕事が忙しくなった」という わかりやすい理由だけでは ないような気がする。

 いつだったか それを地元の人に話したら「それが 地元民になったってことよ。ここの自然を普通に
感じてるってことだよ」と言われた。

 なる程ね。東京に住んでいる人は「東京タワー」なんて登ったことのない人は いっぱいいるし 「六本木ヒルズ」だって急いで行ったりはしないものね。

 そんなことを あれこれ思っていると 網にかかって まだ生きているタコの足を マキリでポンと切り落として

「持っていきな!」と おみやげにいただいた。

「ありがとうございます」

「お昼はタコシャブしようか」

 番屋を出ると 雨はすっかり上がり なんと大きな虹が二重にオホーツクの海にかかっていた。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1,2枚目:乳牛興部町11月

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2003.09.21
星風呂の家 No,15 2003年9月号 知床四季エッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

星風呂の家 No,15 2003年9月号


 我が家は 知床のウトロにあるが 海沿いではなくて ホテルが立ち並ぶ 丘の上にある。

 キッチンからは オホーツク海に沈む 夕日が美しい。

 冬場は 流氷の動きもすぐにわかるので 遠方の友人達にもかなり正確に 流氷情報を伝えることができる。

 我が家に来た ほとんどの人は 「景色が一番のごちそうだね」という。

実は 10年程前の春に 主人が突然に「家を建てる」と言い出した。そんなこと聞いても 思っても いなかったので「どうして急に・・・」と聞くと「すごく いい土地が あるんだ」という。

連れて こられたのが 今のこの家の場所だった。

 それからは もう トントン拍子に事はすすみ 秋には引っ越しをしていた。新居に入ったある日 主人は笑顔で言ったのだ。

「オレは約束を守ったんだ」という・・・

きょとんとする私に 「オラ・・・ あの長野の・・・」ハァーッ! と驚いて はるかな記憶がよみがえった。

 その頃 私達は結婚を決めて 長野県で住む家を探していた。何件目かの 不動産屋さんで「いい物件がありますよ」というので そこの娘さんに案内してもらった。

 それは 小さいながら一戸建てで 長野県が一望できる丘の上にあった。なにより気に入ったのは ガラス張りの お風呂場でそこから見える風景が すばらしかった。

そして 入浴中に星が見られるようにと 天窓までついていた。
私達は すぐにその場で 手続きを済ませ その家を「星風呂の家」と呼び 入居できる日を楽しみしていた。

 ところが 2,3日後 不動産屋さんから 連絡がはいり「あそこは ダメになりました」という。理由を聞いても「大家さんの都合で・・・」と いい張るだけで「あきらめてください」という。

 割り切れない気持ちで もう一度その家を見に行くと庭で車を洗っていたのは 何と あの娘さんだったのだ。裏切られた思いで 泣く私に主人は「絶対 もっと景色のいいところ 見つけてやるから」と言ったのだった。

 それから 10年・・・ 北海道に移り住み 子供も産まれそんなことは もうすっかり 忘れてしまっていた。だけど 現実となって この風景の中にいる 自分は とても不思議な想いにつつまれていた。

 そして さらに10年が過ぎた今「家はしあわせになるための道具」と風水では いわれているそうだが 実際 この家に住みはじめてからラッキーなことも次々に起こる。

 いえ 人からは そう思えない 日常の些細な出来事でも 幸福と思える「幸福力」が ついたのかもしれない。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:阿寒オンネトー10月

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2003.08.21
約束 No,14 2003年8月号 知床四季エッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

約束 No,14 2003年8月号


 朝起きて すぐにキッチンの窓を見ると ドアから2メートル程離れた草むらに 小鹿が寝そべっている。

 鹿は毎日 庭にいるけれど こんなにも近くで しかも静止している状態で見るのは珍しい。

 どうしたのかなあと思い そっとドアを開けた。「あら! あなたはいつも お母さんと一緒に来ている小鹿でしょう。いつかは 私の大切に育てた 黄色いバラのつぼみを食べてくれたわね」と あの時の くやしさがよみがえるのを グッとこらえた。

 それにしても そばに近寄っても ただ ひたすら 濡れたような瞳をこちらに じっと向けるだけで 「ここに座り込むことを決めた」という意思のようなものさえ感じとれた。

 ときおり 耳をピンと立てて あたりを警戒しているのがわかる。「朝早いから まだ寝たいんじゃないの」と娘が言うので しばらく 様子みていたが 昼近くになっても 時々寝返りのように 体の向きを変えるだけでまったく動こうとはしない。

 いつもなら お母さんに 背中ををペロペロなめてもらったり おっぱいを飲んだりしながら 好きなところで 好きなだけ 草を食べていたのに今日は自分の首が 届く範囲の草を静かに食べている。

 いたずら盛りの子供が 病気になって 寝込んだりすると「ああ やっぱり 少々うるさくても 元気が一番」と思うが なんだかこの小鹿をみていると そんな気持ちになってくる。

 普段は鹿など あまり関心を示さない娘も ただならぬ様子に「この鹿 病気なんじゃない。きっと動けないんだよ」と言う。そうかもしれない。食欲もないし。立ち上がれない程衰弱しているのだろうか?

 でも そういうふうにも見えない。

約束 No,14 2003年8月号 知床四季エッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

もしかしたら ケガでもして足を骨折している可能性もある。いろいろな想像をしてみたが
「とにかく 今夜一晩 このままだったら 明日の朝 自然センターに連絡して保護してもらおう」と娘と話していた。

 ところが しばらくすると突然に「キ~ン」と 鹿の鳴き声がした。すると 小鹿の耳が勢いよく ピンと立った。
その瞬間 今までしっかりと たたんでいた前足を立てて立ち上がり鳴き声のする方向へ 一目散に駆けていってしまった。

 あまりの速さに何がおこったのか わからずにいたが 小鹿は丘の向こう側に走り着いて お母さんと会えて うれしそうにしている。

そうか 今の「キ~ン」という鳴き声は お母さんが小鹿を呼んだのだ。だから小鹿は 耳を立てて お母さんの声を1日中待っていたんだ。

 母鹿は きっと
「お母さんは お出かけするけど ここで待っているのよ。ここは熊もキツネも こないから安全よ。用事を済ませたら 必ず戻ってくるわ。だから どんなことがあっても 絶対に動いてはダメよ。帰ってきたら あの丘の上からあなたを呼ぶからね・・・」とでも 言い聞かせたのだろうか。

 小鹿が座りつづけたところだけ草が倒れて 鹿形サークルができている。「あーあ でも何かが違う!」

 私は苦笑いするしかなかった。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1,2枚目:チミケップ湖津別町 8月

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2003.07.21
それぞれの思いNo,13 2003年7月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

それぞれの思いNo,13 2003年7月号


 6月29日(日曜日)は 予定どうり山の会の登山の日だった。行先は 直前まで 羅臼岳だったが 春先の大雪の為か 羅臼平の手前にまだ かなり雪渓が残っているという 情報がはいったので 急きょ変更して摩周湖の近くの 西別岳に決まった。

 登山口までは ウトロから車で2時間程かかり「たまには遠出もいいね」と 早朝ドライブを楽しんだ。

 山そのものは ハイキングコースと登山の中間程度で 私達、挫折隊も挫折なしで登れた。

 いつもなら 顔の引きつっている 友達も今日は 笑顔を振りまいている。山には よく女性的とか 男性的などという 表現が使われるが その意味では 西別岳は女性的だと思う。それも 春が似合う少女という感じだ。

 あたり一面は草原で 丈の低い熊笹の間から イワツツジやガンコウランなどの 高山植物が びっしりと咲いている。

 この日は 朝から かなり霧が深くて 30メートル先は見えない程だった。白い霧に包まれていると 今、自分がいる場所が ポッと宙に浮いているように思えて 幻想的な気分になれる。

「昔 高校の美術部で行った 軽井沢のスケッチ旅行の風景に似ているなあ。あのときは あこがれの先輩も一緒だったけ」などと 時々乙女にもなれる。

 それにしても いつもは苦しいだけの「登り」に こんなにも気持ちのゆとりが持てるなんて。

 人間 能力に見合った環境を与えられると 想像力まで ちゃんと機能するのだろうか。

それぞれの思いNo,13 2003年7月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 下山してからも 温泉にはいり 元気に反省会の準備をした。「そこ ビール足りてる? お肉焼けてるよ」と いつもは絶対にしない気配りまでして「今日は本当に楽しかったね。たまには 気軽に登れる山もいいよね」と みんなの顔を見回した。


 なぜかいつもより静かだ。


 「どうしたの?」と聞くと 隊長は キッとした顔で「これじゃダメです。この2人が こんなに元気じゃ。やっぱり 西別岳は軽すぎました」という。

「そんなことないよ。私達 オロンコ岩で鍛えたんだよ。努力したの」と反論しても

「もう歩きながら 眠たくなっちゃったよ」

「あれは 登山前の足ならしに丁度いいね」とそれぞれに 不満をもらしている。

 聞いてみなくちゃ わからないって こうゆうこと言うのかなあ・・・

 妙なところで関心してしまった。ということは

「私達が『疲れたとか 先に行って』と挫折しなくちゃダメなの?」

「そうです。その通り!」「挫折隊を卒業したいなら 新しい人を連れて来て!」とまで言っている。

 人の苦しむ姿を見て 自分達が頑張れるなんて性格悪いよと出かかった言葉をのみ込むと

 「秋はもっとキツイ山にしましょう!」

 話は決まったところで 反省会は ふたたび盛り上がり夜更けまでつづいた。



 今号で2年目にはいりました。1年間「知床四季のエッセイ」を読んでくださってありがとうございました。これを書くようになってから 日常をていねいに生活をするようになりました。
これからも 続けてまいります。よろしくお願い致します。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:小麦畑小清水町 7月
2枚目:ジャガイモ畑小清水町 7月

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