研修旅行 No,27 2004年12月号
2004.12.21
研修旅行 No,27 2004年12月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

研修旅行 No,27 2004年12月号


 ウトロの主婦仲間と 料理を主に 石けんを作ったり バザールを計画したりと 広い分野での 手作りを楽しむサークルを作っている。

 最初は 小さな子供を連れての子育てサークルのようだったが 発足から15年目のこの頃では すっかり熟年グループの域に入ってしまった。

 その分 それぞれに 仕事を持つようになったので 活動は限られるが毎年 一定額を積み立てている。

 それを 知床の観光も漁もシーズンOFFの この時季に 研修旅行と称して2泊程度の 旅行をすることにしている。

 今年は 京都の予定で 12月5日に出発した。

この日は 前日からの低気圧の影響で北海道内は 大荒れで 空の便はほとんどが欠航か 天候調整中だった。

 女満別空港は 知床から一番近い空港だが 日本で一番欠航便が多い空港と いわれている。

 特に冬は 羽田から乗るときによく「女満別に着陸できない場合は近くの空港に降りますがご了承いただけますか」と聞かれる。

 それでも たいていは予定どうり着くので
「今回も きっと大丈夫! とにかく ウトロを出発しよう」
そう決めて 女7人は車に乗り込んだ。

 すると同時に 1人のケイタイが鳴った。

「今 インターネットで調べたんだけど 女満別空港 全便欠航だって!」という 連絡だった。

 う~ん決まった以上 もう空港に出向いても 無駄だ。

 普通は ここで今回は あきらめて出直そうという運びになるが・・・

1人として「帰ろう!」とは 言わない。

じゃあ JRで札幌まで出て 札幌でゆっくり2泊しようという話に
まとまり 一行は急遽 網走駅へ向かった。

 特急オホーツクに乗り込んだが 途中雪が だんだんと ひどくなり停車駅の手前では「ただいま 大雪の為 ポイント整備を行っておりますので30分程お待ちください」などと アナウンスが流れていた。

 遠軽で 名物の「カニ弁当」を買う頃には千歳空港も閉鎖され 私は隣に座った友人と ウトウトと眠ってしまった。

 そろそろ札幌に着く頃に トントンと仲間の1人に肩をたたかれた。「ねえ やっぱり明日京都へ行くから。1泊延びるよ」と言うのだ。

「ハーッ! そんなこといつ決めたの」

 ねぼけまなこの私達は 大声をあげた。

 一瞬「今頃の京都は やっぱりいいだろうなあ。嵐山や哲学の道も歩いてみたい」と 幻想にかられたが
「そんなこと できないでしょ。

このチケット バーゲンフェアーで取ってるから 日にちの変更は無理よ」と言うと 仲間の1人は

「それがね~~ フフン」と笑う。

 本来は できないのだが「私達は絶対に京都へ行きたい。そちらの都合で行けなくなったのだから 次の日に このチケットを使えるようにしてください。」と

 航空会社に ゴネたというのだ。

研修旅行 No,27 2004年12月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム


 そして すべての予定を1日延ばしに変更し ホテルや食事の予約をキャンセルし 新たに予約したというから もう驚きだ。

「あなた達が寝ているあいだに 2時間50分もケイタイ電話を使ったの。大変だったんだから」

 うん それはわかるよ(ありえないけど)。

「家族にOKとれたの」「ウン全員大丈夫」
「あたし達って あきらめなければ 何でもできるのよ!」

そういう問題でもないが いったいこのパワーは何?

 とにかく 一行は秋の なごりある美しい京都へ降り立ったのでした。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1,2枚目:斜里岳

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2004.11.21
森の掟 No,26 2004年11月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

森の掟 No,26 2004年11月号


この頃 熊を見たという声を ひんぱんに聞く。冬眠前に脂の乗った鮭をお腹いっぱい食べて 長い冬を乗り切ろうとするのは 人間も動物も同じだ。

だからこの時期 産卵の為に 川に上る鮭を狩りしている熊をあっちこっちの川で見かける。

よく木彫りの熊の 代表的なポーズに 鮭を口にくわえている姿があるがそんな場面を「生」で見られるのも 知床ならではの風景だ。

私の仕事仲間には 鹿角を加工して 作品を作っている職人さんがいる。その人の熊の話はすごい!

鹿角職人は 角が材料なので この角拾いがある意味 仕事の半分を占めている。

よく奈良公園の鹿が 角を切られている映像を テレビなどで見かけるがあれは角が観光客に あぶないという理由で切っている。

本来は 1年に1度 春先に自然に角は落ちる。この鹿角拾いに行くと かなりの確立で熊に出会うそうだ。

雄鹿が角を落とすということは やはり武器をなくすようなものだから人目につかない 山の奥深いところで落とす。

森の掟 No,26 2004年11月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

実は そんな場所は 熊の生活圏なので 本来人間は足を踏み入れられないようなところだという。

そこでは 熊を見かけるのは普通だが けっして目を合わせてはいけないのだそうだ。

見つめ合うという行動は 熊にとっては攻撃を意味するからだ。

また 熊は食べきれない程の獲物があると 土の中に埋めておく習性があるらしい。

その獲物が 雄鹿だった場合は 鹿の胴体は 土の中に埋まっていて見えないが角は地上に出ているので 一見角だけが落ちているように見える。

これを 角拾いの人が 気づかずに近づくと とても危険だという。
熊は 大切な自分の食料を横取りせれると見て 仕返しをしてくるそうだ。

突然に現れて脅かしたり 地面が割れるのではないかと 思う程の地響きで近づいてきて 歯をガチガチと鳴らすというから オソロシイ。

そんな時 彼がとる行動はひたすらに

「私は何もしません! ただ仕事の為に鹿角を拾いに来ただけです。
あなたの領域をけっして荒らしたりしません。」と

熊に強いメッセージを送るそうだ。

もちろん けっして目を合わせたりしない。

そうして静かに じっと やり過ごすと 熊は急に足音を立てずに

すーと森に消えるというから驚きだ。

そして次に そこで同じ熊に合っても 今度は見て見ないふりをして 大目に見てくれるというのだから これはもう 人間関係と同じだ。

「まるで童話だね!」というと 「だけど熊は猛獣だから 何があってもおかしくないよ。

どんな時でも 謙虚な気持ちを持って 山に入らないと とんでもないことになるよ。
子供の頃から山には よく行くけど 年々その気持ちは強くなってきたなあ。」

単なる仕事仲間の彼が 今日はとても偉く見えた。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1,2枚目:ヒグマ知床10月

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フィナーレ No,25 2004年10月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

フィナーレ No,25 2004年10月号


 今年の秋は珍しく 紅葉が美しい。先日の土曜日には 半島の反対側のラウス町から知床峠を超えて ウトロまでの知床横断道路全線25キロを歩くという「知床紅葉ウオーク」なる催しがあった。

 これは歩きながら 秋の紅葉を楽しもう!という企画で 参加者は全国各地から約490人もが集まった。

 開会式には 高円宮妃久子様も出席されて激励の言葉をかけられたそうだ。この横断道路は 夏期限定で雪が降ったら閉鎖してしまうという

北国仕様が特徴だ。

 だから ウトロとラウスは 夏は近い隣町だけれど 冬は遠回りして行かなければならない 近くて遠い町となる。

 横断道路は 標高が高い分 景色は絶景で 若葉の頃からずっと訪れる観光客を楽しませてくれる。

 紅葉ウオークに参加した「○○歩こう会」の元気な おじさま おばさま方は 口々に「イヤー本当によかった」「あんなに きれいな紅葉は見たことないよ」と ホテルのお店に来て 満足そうに話してくださった。

 それを聞いて 私も急に紅葉が見たくなり 翌日知床峠まで 車を走らせた。

 知床の紅葉は 8月下旬から始まり ゆっくり進行し 気が付くとあたり一面が色づいていて「秋なんだ」と感じる。

 そして この頃に必ずといっていい程 大風が吹いたり 台風が来たりして 葉っぱは落ちてしまい 紅葉の途中で終わる年がほとんどだ。

 それが今年は 台風が来ても それほど影響はなかったし 強風も吹かなかったのに加えて 夏に猛暑がつづき 寒暖の差が激しかったのも

フィナーレ No,25 2004年10月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

良かったのかもしれない。

 例年だと「赤色」が少ない知床の紅葉だが 今年は近年にない程
色がきれいだ。

 峠の頂上は もう終わりに近いが 途中の尾根のあたりは ナナカマドの赤い色々がひときわ鮮やかだ。

 それを引き立てているのが ダケカンバの黄色で 絵の具のチューブをそのまま塗ったかのような ハッと息をのむ美しさだった。 

 いわば この季節は 春から育った木の葉達の「フィナーレ」でありさみしさの中に ちょっと華やかさも感じられて 私は好きだ。

 自然と一緒に暮らす知床の人々にとっては これからやって来る冬へのはかなくて美しい 儀式のようにも思える。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:雌阿寒オンネトー11月
2枚目:池の湯屈斜路湖10月

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2004.09.21
県民性 No,24 2004年9月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

県民性 No,24 2004年9月号


 「出身地でわかる人の性格」という本を立ち読みしていたらあまりにも 長野県のページが 主人にぴったりなので 思わず声を出して笑ってしまった。

「理屈っぽくて 議論好き 四角四面で まじめ一本やり」
うん これはかなりの確率で当たっている。

 県民性については 前から少し興味があった。

知床は観光地なので 全国各地から お客さまがやってくる。
ところが 同じような話をしたり 同じような場面であってもその地方 地域で独特の感じ方があることに気づいた。

 最初のうちは「単なる偶然」と思っていたが 同じことが重なる程にだんだん確信を深めていった。

 それは 買い物を通じて顕著に表れるように思う。お金を使うということは その人らしさが一番出てしまうのかもしれない。

 たとえば お店で「まけてよ!」と言われる。こちらも観光地なので ある程度は覚悟しているから

「いいですよ。5%引きで どうですか」というと
「う~ん もう一声」となる。
「じゃギリギリ10%引きでいかがでしょう」

これでだいたいは 「よしゃ じゃ それください」となる。

これは普通で気持ちいい値切り方だ。

 それが たまに「3割は大丈夫だよね。それと これ一つおまけにつけて・・・」
と勝手に決め 商品を持って立ち去ろうとする人がいる。

 出身地を聞くと「やっぱりね・・・」と なるので これは県民性は否定できない。

 自分も含めて 買い物はキレイにしたいと いつも思っている。キレイに買うという基本は 相手にイヤな気持ちを与えないことだと思う。

「少し安くしすぎちゃったけど あんなに気に入ってくれたから まっ いいか」
売り手にこう思わせる買い物は 成功じゃないかな。

 さて 北海道人はというと
「相手かまわず 思ったことを口にする 大陸的なアバウトさ」と ある。

なるほど こちらも当たっている。

県民性 No,24 2004年9月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 開拓精神のなごりなのか たいていのことは「いいんでないかい」で 済んでしまう。

 最初は これが知床の浜気質なのかなあ と思っていたがどうやら全道的にそうらしい。

 それは 車の運転にも共通していて 道産子は運転がザツで マナーが悪いと いわれている。

 その上 スピードだけは 普通の道路でも高速道路並みの速度で走る。冬道でも この調子なので 毎年同じような場所で 事故がおきる。

 そういえば 私の知人に 事故ではないけれど 毎年秋に救急病院に運ばれる人がいる。

 彼女は鮭の「すじこ」が大好きだ。

 すじこには アニサキスという寄生虫がまれにいるので まる1日は醤油の中に漬け込んで作るのが鉄則だ。

 これが胃の壁に刺さると ころげ回る程の激痛をおこす。彼女は 毎年このアニサキスで病院に駆け込んでいる。

「どうして1日待たないの」と聞くと
「だって1日置くと しょっぱすぎるから おいしいところを食べたいの」と言う。

おいしいのはわかるけど 病院で内視鏡で虫を つまみ出してもらう苦しさを
考えたら 普通は食べないけどなあ。すると彼女は真顔で

「だいたいは 胃酸が虫を殺してくれるから大丈夫さあ!

だけど たまに疲れてたりすると 胃酸の出が悪くて 虫が生きているのよお・・・」

ウン ほんとにアバウト。

 だけど ここまでできるのは県民性(道産子)ではなくて
彼女によるものだと思っている。最近は・・・



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:サロマ湖湧別町9月
2枚目:ヒマワリ畑小清水町9月

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真夏の夜の夢 No,23 2004年8月号 四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

真夏の夜の夢 No,23 2004年8月号


 「北海道なのに どうしてこんなに暑いの?夜でも29℃もあるのよ?」とお客様から よく苦情をいただく。

 そのたびに「本当にそうですね。せっかくいらしたのに申し訳ありません」自分に責任はないけれど「悪いなあ」という。気持ちも本当で複雑な思いだ。

 なにしろ 今年は6月から暑くて ここ3週間程は 連日30℃を下らない。

 3、4前にも とても暑い夏があり クーラーがそれこそ飛ぶように売れた。

 ウトロの町にある 温度計が38℃を示した日 こらえきれず我家もクーラーを入れた。が、この年は 1週間程もしないうちに 涼しくなってしまい昨年の冷夏には1度も登場しなかった。

 それが今年は 朝からクーラーがフル回転で なんだか本州の夏を思い出してしまった。

 こうなると もう開き直って「暑さを楽しもう」という気分になる。

 夏休みで帰省している高1の娘と庭にベンチを置いて スイカを食べたり
花火をしたりして 夏気分を盛り上げている。

 花火というのは なぜか音の出るものや ハデな色彩のものが先で最後にせんこう花火をやって終了と我家では コースが決まっている。

華やかな後の闇を楽しむように せんこう花火のオレンジの松葉模様を見つめていて ふと気づいたことがある。

「あれ!私は いつから花火を普通にできるように なったんだろう」と・・・

 何をかくそう 私は子供の頃 怖くて花火を持てなかったのだ。父親に「ホラ持ってごらん。大丈夫だから」と無理やり持たされて泣きべそをかいていた 思い出がある。

 だかが花火だけど 友達や妹はさりげなく やっていることなのに
なぜどうして こんな簡単なことができないのかと 自己嫌悪に陥ってしまった。

 今になって思うと 怖いものに近寄りたくない防御心と それを
エイッと 思い切る力が欠けていたのだと思う。

真夏の夜の夢 No,23 2004年8月号 四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 これらには もう一つ共通した思い出がある。

それは体育の時間の飛び箱だ。体育は別に好きでも 嫌いでもなかったのに
こと この飛び箱は 大の苦手で 6年生でも3段が飛べなかった。

これは そうとうのコンプレックスになり 今でも私の心のすみっこに痛みとして残っている。

 どうしても 飛び箱の前で手をポンとついて 足をサッと開き 飛び越えるという動作ができなかった。

「思い切ってやれ」と 担任の先生は何度も励ましてくれた。しかし この思い切れる力の源は 自分の中にある自身だと思う。

目の前にある障害物を 飛び越える自身があるからこそ飛び箱の前で踏み切れるのだ。

なぜ自分には それが不足していたかは 今だ不明だが 子供の頃にそんな自分がイヤだった分 大人なってからは

「女性にしては思い切りがいいね」とか 「迷わないね」と言われることが多い。

 子供の頃 使い忘れた「思い切る力」を最近使い過ぎて 細やかな心使いが欠けているかもね。注意しなくちゃ。そんなことを思っていると

娘の「せんこう花火 終わってるよ」の声で 現実に引き戻った。

あたりは 夜が深まり 一面の星空が広がっている。

ビールと星とスイカ! いいなあ 真夏の夜の夢だね。

 今なら いつだって飛べるよ!!



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:知床ウトロプユニ岬より8月
2枚目:ヒマワリ畑女満別町朝日ヶ丘展望台8月

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