輝いている No,3 2002年9月号
2002.09.19
輝いている No,3 2002年9月号 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

輝いている No,3 2002年9月号


「浜にイワシが来ているよ」友達から連絡がはいる。「うん ありがとうすぐ行く」これだけで話が通じる。

さっそく長靴、軍手、バケツの浜の3点セットを持って浜辺へ急ぐ。車で2,3分の何時もの場所に着くと イワシ仲間がもう大勢集まっていた。時間は夜の10時過ぎ。車のライトで照らしてみると全体が銀色に見える程イワシは来ていた。浜に降りてイワシを両手ですくってみる。まるで海底から魚が湧き出ているように次々と上がってくる。

「ああ 今年もまた来てくれたんだね。待ってたよ」思わず頬ずりしてしまう程懐かしい匂いと感触だ。もちろん釣り針などはいらない。いくらでも手づかみで獲れる。バケツ1杯は10分もかからない。

毎年ほぼ同じ時季に オホーツク海はここに住む私達にとんでもないステキな贈り物を届けてくれる。それは年に何回かあって 嵐の後の「コンブ」だったり、秋の終わりの「サンマ」であったりする。産卵の為にやってくる この片口イワシの大群もその一つだ。

輝いている No,3 2002年9月号 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

夏の間のほんの2,3日だけ。時間も午後10~12時頃に限定される。それを過ぎると もうたったの1匹もいない。見事なまでの団体行動だ。このイワシの大群の動きをうまくキャッチするにはタイムリーな情報が大切となり いつの間にか仲間うちで「イワシ連絡網」なるものができつつある。

知床に住んで、普段はめったに海に行ったりしない。だけど 心の中には海に憧れる気持ちは何時もある。
イワシの大群の訪れは そんな自分の中にある小さな欲望を満たしてくれるきっかけを作ってくれるのかもしれない。

この日ばかりはドップリと海につかり やって来た海の贈り物を有り難くいただくのだ。

そんなこんなで 1時間程夢中でイワシと格闘していると 両手に山盛りのバケツを持った友達が、「そろそろ帰ろうか」という。「そうだね」と言いかけて彼女の顔を見るとなにやら美しい・・・。

月の光を浴びて艶めかし程だ。顔や髪だけではなくて 全身ラメのベールをかけたようにキラキラしている。

「輝いているよ」というと 「お互いにね」と返してきた。見ると全身にまんべんなく付いたイワシのウロコが光に反射して それはそれは美しい虹色に輝いていたのでした。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:鮭遡上斜里町遠根別 10月
2枚目:親子鹿知床岩尾別温泉ホテル地の涯 6月

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