自然観察会INルシャ No,4 2002年10月号
2002.10.19
自然観察会INルシャ No,4 2002年10月号 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

自然観察会INルシャ No,4 2002年10月号


熊に対するイメージは「怖い、猛獣、大きい」といろいろだが、どれも当たっていると思う。でも今回「自然観察会INルシャ」に参加して、印象は少しずつ変わりつつある。

カムイワッカ湯の滝を越え、知床大橋よりさらに奥へエンジンが焼き切れそうな山道を車で30分断崖絶壁や原生林をくぐり抜け、「未知の土地」ルシャの番屋に到着した。こちらの意気込む気持ちが相手に伝わってしまうのか前半はなかなか熊の姿を観ることはできなかった。

半ばあきらめかけて、子供達と番屋の方々の温かい心尽くしに感謝しつつ昼食をとっていると「あ、熊だよ、あれ!」一斉に外へ出たこちらの、慌ててビデオやカメラをセットする姿に比べ熊は驚く程さり気ない。

よく熊には「雄大な」とか「悠々と」などの形容詞が使われるがそういう言葉はあまり似合わない。ルシャの熊はあくまでもさり気ないのだ。

みんなで一頭に集中していると、海岸にもう一頭がフラリフライとおりてきた。こちらは全身が栗色で頭の上の部分は金髪がかかって見えた。私はこの時熊の色が黒一色でないことを初めて知った。

先の一頭は浜に打ち上げられたイルカの死骸を食べに来ていたのだが、後から来た金色の熊がえさを見つけても奪い合ったりはしない。ちゃんと順番をまっているのだ。その姿には謙虚さえ感じてしまう。

自然観察会INルシャ No,4 2002年10月号 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

そういえば出発前に自然センターの方から聞いたお話の中に「熊は犬歯が発達しているものの奥歯は草食動物と同じ形の臼歯を持っている。」と言われたのを思い出した。「からだの割にはあごも小さいし、意外と優しい感じ・・・。」

そんなことを考えながら前方を見ると番屋に近づき過ぎた先ほどの一頭が「ホレ!ここに来るんじゃない!」と漁師さんに叱られている。

「熊を叱る人!?」映画の中のワンシーンのような出来事になんだかだんだん現実離れした世界に入り込んでしまった。

私の知人に熊と「森の中を30分程一緒に歩いたことがある」という人がいる。その話を聞いた時にはとても信じられなかったけれど、この光景には「そんなこともあるかなあ」という気持ちになるから不思議だ。

私にとっては知床大橋のゲートを通り抜けただけでも冒険だったように一歩でも自然に深く足を踏み入れてみると、現実離れだと思っていたことが実は真実だったり、その逆も考えられる。

そして熊も人も、いろいろな動物も花や木も同じように この知床に生息していて、それは自然を作り上げている大切な一部分なのだと改めて気付いた。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1,2枚目:ヒグマ知床 10月

2004年
知床四季のフォトエッセイ Top
研修旅行 No,27 2004年12月号
森の掟 No,26 2004年11月号
フィナーレ No,25 2004年10月号
県民性 No,24 2004年9月号
真夏の夜の夢 No,23 2004年8月号
近況 No,22 2004年6月号
旅立ち No,21 2004年5月号
調和 No,20 2004年4月号
同窓会 No,19 2004年2月号
世界で一つだけの花 No,18 2004年1月号

2003年
師走 No,17 2003年12月号
早朝の港 No,16 2003年11月号
星風呂の家 No,15 2003年9月号
約束 No,14 2003年8月号
それぞれの思いNo,13 2003年7月号
達成感 No,12 2003年6月号
共存 No,11 2003年5月号
春の訪れ No,10 2003年4月号
冬のタンポポ No,9 2003年3月号
流氷ウオーク No,8 2003年2月号
心の栄養 No,7 2003年1月号

2002年
楽しむ No,6 2002年12月号
秋に想う No,5 2002年11月号
自然観察会INルシャ No,4 2002年10月号
輝いている No,3 2002年9月号
笑顔の秘密 No,2 2002年8月号
無農薬 No,1 2002年7月号

- CafeLog -