調和 No,20 2004年4月号
2004.04.21
調和 No209 2004年4月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

調和 No209 2004年4月号


 今年は 春先に何度も「ドカ雪」が降り 雪解けが遅い。流氷も 先日の南風に乗って一気に無くなったと思ったら 2、3日前の寒い日に また戻って来た。

 流氷は 来る時と帰る時が美しいと 云われているが 「ハス状」に氷が広がっている 今がまさにその状態だ。

 この時季 流氷の動きもそうなのだが 季節の変わり目なので 気温の寒暖の差がかなり激しい。

 ふくらみはじめた 柳の木を見て「春だ!」と思って喜ぶと 次の日は逆転して吹雪だったりする。

 だけど 春は確実に近づいているのがわかるから 北国に住む人にとっては なんとなく 心うれしい季節でもある。

 そんな中 冬越をした鹿達にとっては ちょっとした試練が待っている。

 ここ数年は鹿が増え過ぎたせいもあって 春先の今頃は餌不足でやせ細り 餓死する鹿も 少なくないらしい。それに加えて 天敵である熊が冬眠から目を覚ますからだ。

 冬眠を終えた熊は当然だが これから活動する前に 腹ごしらえをしなければならない。

 秋のように 川に鮭は登らないし 木の実もまだないから 熊にとっても深刻だ。

 それで熊は なるべく体力を使わずに 鹿を仕留める方法を取るという。今の時季だと 溶けかかった雪はとても堅くて 鹿は滑って骨折したり堅雪の割れ目に足をとられて 抜け出せなくなったりする。

 熊は できるだけ雪の上に鹿を追いつめて 自ら怪我するのを待ち一気に襲うのだそうだ。

 鹿が滑って困る堅雪も 熊には爪がタワシのように スベリ止めになり好都合らしい。

調和 No209 2004年4月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 先日「知床ナチュラリスト協会」で 自然ガイドの仕事をしている友人から熊に追いかけられた雄鹿が ついに倒れて それを熊が血だらけになって内臓を食べ散らかしていたと聞いた。

 丁度 仕事中だったらしくて お客様を2人案内していたが その光景があまりにもショッキングで 気分が悪くなってしまい その内の1人は夕食が取れなかったと言っていた。

「こんな すごいのを見たのは この仕事をしていて はじめてですよ。普通は 雄鹿は角を持っているので危険度が高いから 避けるんですけどねえ」

と かなり興奮気味だった。

 これは 次の日の新聞の一面にも大きく取り上げられて「雄鹿を食う熊」の写真が載っていた。

 こうして冬眠あけの熊と 越冬した鹿との戦いは 知床の原生林の中で毎年繰り広げられているという。

 弱肉強食とは よく言われているけれど こんな風にして自然は丁度よく調和しているのかなあと思うと やはり 知床に生きる

一動物として 私達人間も謙虚な気持ちが宿る。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:海明け常呂町3月末
2枚目:知床岩尾別温泉4月

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