星風呂の家 No,15 2003年9月号
2003.09.21
星風呂の家 No,15 2003年9月号 知床四季エッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

星風呂の家 No,15 2003年9月号


 我が家は 知床のウトロにあるが 海沿いではなくて ホテルが立ち並ぶ 丘の上にある。

 キッチンからは オホーツク海に沈む 夕日が美しい。

 冬場は 流氷の動きもすぐにわかるので 遠方の友人達にもかなり正確に 流氷情報を伝えることができる。

 我が家に来た ほとんどの人は 「景色が一番のごちそうだね」という。

実は 10年程前の春に 主人が突然に「家を建てる」と言い出した。そんなこと聞いても 思っても いなかったので「どうして急に・・・」と聞くと「すごく いい土地が あるんだ」という。

連れて こられたのが 今のこの家の場所だった。

 それからは もう トントン拍子に事はすすみ 秋には引っ越しをしていた。新居に入ったある日 主人は笑顔で言ったのだ。

「オレは約束を守ったんだ」という・・・

きょとんとする私に 「オラ・・・ あの長野の・・・」ハァーッ! と驚いて はるかな記憶がよみがえった。

 その頃 私達は結婚を決めて 長野県で住む家を探していた。何件目かの 不動産屋さんで「いい物件がありますよ」というので そこの娘さんに案内してもらった。

 それは 小さいながら一戸建てで 長野県が一望できる丘の上にあった。なにより気に入ったのは ガラス張りの お風呂場でそこから見える風景が すばらしかった。

そして 入浴中に星が見られるようにと 天窓までついていた。
私達は すぐにその場で 手続きを済ませ その家を「星風呂の家」と呼び 入居できる日を楽しみしていた。

 ところが 2,3日後 不動産屋さんから 連絡がはいり「あそこは ダメになりました」という。理由を聞いても「大家さんの都合で・・・」と いい張るだけで「あきらめてください」という。

 割り切れない気持ちで もう一度その家を見に行くと庭で車を洗っていたのは 何と あの娘さんだったのだ。裏切られた思いで 泣く私に主人は「絶対 もっと景色のいいところ 見つけてやるから」と言ったのだった。

 それから 10年・・・ 北海道に移り住み 子供も産まれそんなことは もうすっかり 忘れてしまっていた。だけど 現実となって この風景の中にいる 自分は とても不思議な想いにつつまれていた。

 そして さらに10年が過ぎた今「家はしあわせになるための道具」と風水では いわれているそうだが 実際 この家に住みはじめてからラッキーなことも次々に起こる。

 いえ 人からは そう思えない 日常の些細な出来事でも 幸福と思える「幸福力」が ついたのかもしれない。



著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:阿寒オンネトー10月

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