知床四季のフォトエッセイ 早朝の港 No,16 2003年11月号
2003.11.21
早朝の港 No,16 2003年11月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

早朝の港 No,61 2003年11月号


 1週間程前に 山の会の仲間の女性が東京から フラリとやって来た。

 シーズンOFFのうえに 小雨が降っていて 彼女は行動に迷っていた。

すると 地元の友達が「明日の朝 うちの船に乗らない」と 声をかけてくれた。彼女は「乗物の中で船が一番酔うの」と いうのにもかかわらず「乗る!乗る!」と大はしゃぎだ。

 私も以前 小さな漁船に乗せてもらったことがある。

船長は いつもは おだやかな笑顔の人なのに 船に乗ったとたんにまるで人が変わったように「ホレ!そこ何してんだ。バカ!網をちゃんとひけ。ホレ」と 恐怖の大変身をして船酔いなど してる暇がなかった。でも船を降りたら またいつもの笑顔で「これ持っていきなさい」と今上がったばかりのカレイをくれたので その変貌ぶりに2度びっくりしてしまった。

 そんな経験があるので はしゃぐ彼女に「船は漁師さん達の仕事場だから絶対ジャマしないでね」と言っておいた。

 さて当日 カッパに長靴、軍手を着けて港へ向かった。が・・・ 待ち合わせの時間 5分前になっても誰もいない。「確か 共栄丸っていったよね」と 2人で船の前で待っていた。ただ船のエンジンはかかっていたので 出港はするらしい。

そこへ漁師さん達全員が現れた。

 普通は出港前の漁船といったら 漁の準備や 何かで忙しく動きまわっている漁師さん達を想像していたので「どうしたの揃って」と聞くと 「どうしたって。メシだよ。メシを食ってたの」

「ああ そうなんだ」

 そうよねえ。朝ごはんね。そういえば漁師さん達は 集まって仕事前に自分の番屋で一緒に朝食を取るのだそうだ。これから 仕事という時に コーヒーとトーストでは 元気出ないもね。

 それぞれの番屋には 専用の”おばさん”がいて 朝からしっかりと作ってくれるらしい。それに「1つ釜の飯」を食べると 仕事上の結束も強くなると いわれている。

「じゃ よろしくお願いそます」

彼女を置いて 一眠りしてからまた港に 迎えに行った。「酔い止めの薬を飲んだけど ベタナギでまったく大丈夫だった」と笑顔で下船して来た。

早朝の港 No,16 2003年11月号 知床四季のエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 港には 上がったばかりの鮭が 山積みで小雨の中でも キラキラしている。

 思えば こんなに早朝に港に来たのは ウトロに住みだしてはじめてだ。

 世界遺産の最終候補地に選ばれる程 自然に恵まれているのに1歩 自分から足を踏み出さなければ それを楽しむことはできないんだなあと思う。

 私達も 知床に住みはじめた頃は 子供達を連れて「カムイワッカ湯の滝」を登ったり 「知床五湖」を歩いたりと生活そのものが旅行気分だった。

 けれど 下の子が生まれた頃からは 必要以上は何もしなくなってしまった。これは「仕事が忙しくなった」という わかりやすい理由だけでは ないような気がする。

 いつだったか それを地元の人に話したら「それが 地元民になったってことよ。ここの自然を普通に
感じてるってことだよ」と言われた。

 なる程ね。東京に住んでいる人は「東京タワー」なんて登ったことのない人は いっぱいいるし 「六本木ヒルズ」だって急いで行ったりはしないものね。

 そんなことを あれこれ思っていると 網にかかって まだ生きているタコの足を マキリでポンと切り落として

「持っていきな!」と おみやげにいただいた。

「ありがとうございます」

「お昼はタコシャブしようか」

 番屋を出ると 雨はすっかり上がり なんと大きな虹が二重にオホーツクの海にかかっていた。





著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1,2枚目:乳牛興部町11月

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